みんな病んでる
アスベルさん総愛され話






「ねぇソフィ?私のお腹の中にね、アスベルの赤ちゃんがいるのよ。嬉しいでしょう?」
「………へぇ、シェリアすごいね」
「………ふふ、ソフィももうすぐお姉ちゃんになれるのね。楽しみね、ソフィ」
「………うん、私、シェリアの赤ちゃん楽しみだよ………とっても、とっても嬉しい」
「アスベル似の女の子が良いかしら……それとも私似の男の子……ソフィはどんな子が良いかしら?」
「ううんシェリア。元気に産まれてきてくれれば、女の子でも男の子でも、どっちでも良いよ。アスベルとシェリアが元気だったら、それだけで私も嬉しいの」
「あらあら、すっかりお姉ちゃんねソフィは。全く、アスベルにも見習わせたいわね。」
「………うん、そう、だね」


ソフィはそっとシェリアに気づかれないようにため息を吐き出した。シェリアはソフィの様子には気にもとめていない様子で自分のお腹を擦り続けながら自分の子供に語りかけている。貴方の名前は何にしましょうか。もうすぐ会えるのよ。あなたは私達の誇りなんだから元気に産まれてこなきゃ駄目よ。ソフィはそんなシェリアの様子を見てもう一度深くため息を吐き出した。




(………みんな、おかしくなっちゃったよ、アスベル)




今ここにはいない皆のことを、ソフィは想った。




ユーリはアスベルがいなくなってから、何かあるとすぐ怒るようになったよ。それで何回か兵隊さんを思い切り殴り飛ばして、捕まりそうになってた。
フレンは騎士の仕事をやめちゃった。アスベルが帰ってきたら、一緒に最初からやり直すんだって。
リチャードはアスベルを探すために、国をあげて兵士さん達の指揮を執ってるよ。いつも忙しそうなんだ。
ヒューバートは誰が話しかけても必ず「兄さん!!今までどこに行ってたんですか!!」って言うようになったよ。独り言も多くなって、家に閉じ籠りがちになっちゃった。
教官はアスベル宛にずっと手紙を書いてるの。いつでもアスベルに会えるようにって。それでその手紙は私の家に毎日届くんだよ。
パスカルはメカアスベルばっかり作って、気に入らなくてすぐ壊しちゃうんだ。こんなの全然本物のアスベルじゃないって言ってまた新しいのを作り出すの。
シェリアはお腹にいるはずもないアスベルとの赤ちゃんのことをずっと想って過ごしているよ。いつ産まれてくるのかしらって膨らんでもないお腹をなで続けるの。



(………ねぇ、アスベル。みんなおかしくなっちゃったよ。)




「みんな」おかしくなっちゃった。それはね、私もなんだよ。だってヒューマノイドに感情なんて、ないんだよ。アスベル、私もおかしくなっちゃった。アスベルに会いたい。アスベルと沢山お話したい。アスベルに抱き締めてもらいたい。アスベルにいろんなこと、教えてほしい。こんなにもアスベルのことばっかり考えちゃうの。アスベル、会いたい。会いたいよ。皆、アスベルのこと待ってて………皆、アスベルのこと愛してるんだよ。

ーーーーそれなのに






ねぇ、アスベル









「どうして死んじゃったの」